吃音関連の本の紹介
吃音者自身が書くフィクション/ノンフィクション
吃音者自身が書く作品は当事者であるがゆえに、吃音の描き方や感じ方ががとてもリアルです。
どの作品も吃音のみじめさやもどかしさ、葛藤がリアルに描かれています。
そのため、私のような吃音者が読むと共感できる部分がとても多いのが特徴です。
その反面、分かってもらえるという喜びもあるという思いと同時に、苦痛や惨めさを感じることも少なくありません。
でも、これが吃音者の考えていることや現実なんです。
そのことを知ってもらいたくおススメの本を紹介します。
『きよしこ』
著:重松清
新潮社
吃音のある少年、きよしの青年期までの人生を描いた物語。
家でも学校でも、言いたいことが言えなくていつも悲しい思いをしていた。
思ったことを何でも話せる友だちは聖夜に会ったふしぎな「きよしこ」だけ。
きよしこに打ち明けられる悩みや葛藤は吃音者の心をよく代弁している。
『青い鳥』
『僕は上手にしゃべれない』
中学生悠太は自己紹介のある教室から逃げ出してしまうくらい吃音に悩んでいる。
言いたいのに、言いたいのに、言いたいのに、言えない・・・
そんな悠太がとある事情で放送部に入ってしまう。
「上手に話せなくても放送部に貢献できるんだ。」という同級生や先輩との出会いが悠太を成長させる。
言いたくても言えなかったありったけの想いを大勢の人の前でどもりながらスピーチする場面は必読である。
↑【読書感想ブログ書いてます】
『僕は上手にしゃべれない』は吃音で悩んでいる中学生の柏崎悠太くんが中学入学から更に吃音に悩み、人……
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
著:押見修造
太田出版
高校に入学した大島志乃は言葉がつまって、自分の名前を言うことができない。
周りからからかわれたり誤解されたりしている中、音痴の岡崎加代と知り合い友情を深めていく。
漫画なので吃音者のどもっている時の表情や考えていることが分かりやすく理解しやすいおススメの一冊。
『マイナスの経験 その先に見えたこと どもり社長のはなし』
小さい頃からコンプレックスに感じ、隠し通したいと念じてきたどもりのこと。
今でも言葉は時々つまってしまうけど、それは社長としてのマイナスにはならない。
弱みや挫折に見える体験は、一時は大きなプレッシャーになっても、受け入れて対処法を見つけることで、自分をひと回り大きく成長させる経験になる。『マイナスの経験 その先に見えたこと どもり社長のはなし』
吃音のある英国人女性の人生の心情を書き綴っている。
7歳のころから吃音が出始め、吃音を受け入れる20代後半までの彼女にはどんなことがあったのだろうか?
著者自身だけでなく、他の吃音者や家族、専門家にもインタビューを実施し、吃音研究の実態や歴史も学べる総合的な本。
『どもる体』
伊藤亜紗
医学書院
医学的や心理的な情報ではなく、”身体論"として吃音にアプローチする。
吃音が出るとき、当事者の体のなかでは一体何が起こっているのか?
どうして、歌っているときや独り言は吃音が出ないのか?
そして、吃音者はそのことに対してどのように向き合っていくのか。
「言葉」ではなく「体がどもっている」ことについて掘り下げる1冊。
吃音者が書いた吃音事情はやはりリアルである。
- 店で注文ができない。
- 電話に出るのが怖い。
変な人だと思われたくない
これこそ健常者には理解できない世界だろう
当事者をはじめ家族や、研究者、支援団体からの取材も交えたノンフィクションの1冊である。
文:アラン ラビノヴィッツ
絵:ティア チエン
訳:美馬しょうこ
あかね書房
幼いころからうまく話せないぼくは"だめなやつ"だと思われていた。
そんなぼくでも一人の時と動物と話すときだけはうまくしゃべれるんだ。
そして、ぼくは誓った。「虐げられている動物たちの声になろうと」
それから動物学者になったぼくはある森でジャガーと出会った。
<吃音による悩みや努力が前半、そして後半は、動物たちへの愛をつたえるノンフィクション・ストーリーとなっている絵本。
"吃音ドクター"の書いた本
吃音者であり現役医師の菊池良和氏の著書です。
吃音者と医師との両側面から吃音とはどういうものか、吃音者はどんな気持ちであるのかが分かりやすく簡潔に書かれていて前向きな気持ちにさせてくれます。
医学的な情報は、吃音者だけでなくその保護者や家族の疑問とモヤモヤにとても役立つと思います。
吃音者自身やその保護者だけでなく、学校の先生や友人などにも絶対読んでもらいた本を載せています。
著:菊池良和
毎日新聞社
幼少期から吃音に悩み苦しみ、誰にも相談できずに過ごしてきた人生。
それでも未来を信じて、現在は外来外科医師として活躍している著者のエッセイ本。
救急外来の指示などの緊急時には吃音が出ると非常にやっかいだと思うが、そのあたりのことも詳しく書かれていて吃音者に勇気を与えてくれる。
また、医師としてエビデンスのある医学的アプローチもとても参考になる。
著:菊池良和
光文社
吃音に悩んできた医師が紹介する「吃音の世界」
吃音の世界に足を踏み入れることで、吃音者の心情や取り巻く環境が理解でき、結果として吃音者が過ごしやすい世界になれると思わせてくれる。
小学生のころ、「ありがとう」も言えず、音読の順番待ちにびくびくしていた吃音のある私が、どうして社会福祉士という仕事を選んだのか。
吃音で苦しんでいる人に伝えたい、
「吃音があったって」「〝きれいに〟話せなくたって」思いは相手に伝えられる。
吃音当事者、家族、友人等のための本
僕もそうでしたが、吃音者の子ども時代というのは一番苦しい時だと思います。
周りには理解されず相談する相手もいなくて、吃音があるのは自分一人だと思っていました。
そんな時にこんな本に出会いたかった。
そんな本を載せています。
著:伊藤伸二
解放出版社
数多くの吃音の子どもたちと向きあい支援してきた著者が、吃音のある子どもたちに贈る1冊。
具体的な場面を提供することで、吃音との向き合い方をQ&Aやさしく教えてくれる。
言葉がうまく出ないときって、あせる。悔しくて、恥ずかしくて、悲しくて泣きたくなることだってある。僕もそうだ。でも、この本は、「そんな自分もまるごと、世界にたった一人の、かけがえのない自分なんだよ」と教えてくれた。肩をそっと抱いてくれた。優しくて力強い手のひらの温もりが、確かに伝わった
(重松 清さんの推薦文より)
著:伊藤伸二
解放出版社
こうすれば治るという治療法がない吃音に、どうすればうまくつきあえるのか。
本人はもちろん、その周囲の人たちはどう対応すればいいのか。
考え方やコツなどが分かる1冊。
著:スー コトレル
イラスト:オノビン
訳:上田勢子
監修:廣嶌忍
大月書店
私の吃音わかってほしい!
どうしてすらすら話せないのか、それはほっておいたほうがいいのか、一体どう対応したらいいのか など、吃音の理解を周囲に訴える1冊。
吃音の対応は幼少期から成人まで幅広く必要であるが、ここでは早期の吃音対応に重きを置いている。
「子どもが吃音かも?」と気になりだした保護者にとっては大変参考になるだろう。
吃音尾のある子どもたちはどう考え、どう過ごし、将来のことをどう思っているのか。
大人が子どもと対等に話し合い、子どもが「どもってもいいんだ」と自信をもち自分らしく生きられるようになる。
著:水町 俊郎、伊藤 伸二
ナカニシヤ出版
吃音は治る?治らない?
そんなことにこだわるよりも、もっとあなたらしく生きる道があるんじゃないかと勇気づけられる1冊。
著:菊池良和
講談社
吃音の悩みは医学的に正しい情報を得るところから!
吃音の情報は日々変わっていき、かつての常識はもう当てにならないことが多い。
吃音ドクターによる吃音の原因、症状、対応などを徹底解説する1冊。
著:菊池良和
学苑社
吃音を映像化した作品
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
主演・南沙良、蒔田彩珠
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の実写化。
原作の雰囲気を壊すことなく仕上がっている。
『青い鳥』
主演・阿部寛
『英国王のスピーチ』
コリン・ファース演じる吃音者ジョージ6世の苦悩と、ジェフリー・ラッシュ演じるスピーチ矯正専門家とのやりとりから始まる。
現代では考えられないような吃音矯正訓練もありながら、お互いに信頼関係を築いていく。
そして、吃音のまま国民の前でスピーチをすることになるのだが・・・
たかがスピーチをするだけの映画と思ってはいけない。
そこに至るまでの練習やできない苦悩がリアルに描かれていて思わず見入ってしまうだろう。